Fahrenheit -華氏- Ⅲ

何で瑠華が!?てかいつから居たの!?


「部長、お忘れですか?セントラル紡績さんとMother’s gateの引き合い期日が25日だと言うことを。Mother’s gateはセントラル紡績さんとの取引の為、クリスマス休暇も後ろ倒しにしてくださったんですよ」


へ…そーだっけ……


「何としてでも24日と25日に型をつけなければなりません。私一人に押し付けるつもりですか?そうなったらパワハラで訴えますよ」


ぱ、パワハラ!?


「そ、それは困る!」


あせあせと言うと、


「ならば仕事をしてください」とキッパリと言われ、瑞野さんは俺の目の前で若干顔色を青くして小さく頭を下げると


「すみません、あたしはこれで」と逃げるようにそそくさと立ち去っていった。


何か……助かった??


後に残された俺と瑠華。


瑠華はいつか見たGUCCIのシガレットケースから一本タバコを引き抜き、ゆっくりとした動作でタバコに火を点けた。


「喫煙ルームがいっぱいでしたので」


と相変わらず無表情だったが、今日はいつもより濃い赤色のリップだったからか、その唇から語られる言葉がやけに冷ややかに感じた。


「い、いつからそこに居たの?」


俺の声はみっともなく裏返った。


まさか全部見られてたわけじゃないよな……


「あなたが非常口を覗いていて、そこから二村さんが怒ったような顔して出てきたときからです」


それって最初からってことじゃん!!


つまり、俺が瑞野さんにクリスマスイブに誘われてたこと挙句の果て抱き合って(見えただけ)たところとかも!?


「あなたが困っていたようでしたので、差し出がましいようでしたが嘘をつきました」


やっぱ嘘……だったんだ…


てか、そ、それはありがたい……けど、やっぱ今日の瑠華いつもにも増して怖いよ~~!


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