Fahrenheit -華氏- Ⅲ
「瑞野さんとクリスマスを過ごす予定がないのならハッキリとお断りすれば良かったじゃないですか」
瑠華が目を細めて、口からこれまた細い煙をゆっくりと吐く。
「そんなこと言っても、相手泣きそうだったんだよ。てか泣いてた」
こんなこと、言い訳にもならないよな。瑠華と過ごせないこと分かり切ってるから尚更そんな言葉で瑠華を傷つけるようなことはしたくない。瑠華の言った通りはっきりと断れば良かったんだ。
そんなことを考えて俯いていると、瑠華がもう一度小さく煙を吐き出し、それと同時にため息のようなものを感じ取りそろりと顔を上げると、俺はぎょっとした。
つー…と瑠華の頬にも一筋の……涙…?
「あ、あのこれは!違くて……!って、何が違うのか分かんないけど、だって俺ら別れてるじゃん」
もう言ってること滅茶苦茶。瑠華の涙を見たのはこれが最初じゃないが冷静な判断が完全にできなくなっていた。これじゃ瑠華をもっともっと傷つけると言うこと分かり切っていたのに、瑞野さんとの間で板挟みになっていて……
いや、これは完全に俺自身の保身の為だ。二人の女の前で都合の良い男を演じる最低な俺。
すると瑠華は人差し指で涙を拭いながら赤い唇の先をふっと歪め
「だから甘いって言ってるんですよ、あなたは」
瑠華は目を細めてジャケットのポケットから目薬を取り出した。
め、目薬ーーー!!?