Fahrenheit -華氏- Ⅲ
「本命!?え!どうゆうこと??二村くんて緑川さんと付き合ってるんじゃ……」
「でも緑川さんクリスマスは二村くんと出かけるって言ってたよ」
「え、どうゆうこと?本命は緑川さんじゃないってこと?」
と女の子たちがざわめきだす。
「やだなー、柏木さん。俺が二股掛けてるみたいな言い方やめてよ。俺の本命は葉月一人だけだよ」と二村は顔をひくつかせながら何とか笑顔を作ろうとしている。だがその笑顔は歪に歪んでいた。まるで作りそこないのビスクドールだ。
「あら、あなたの股は部長より緩いとお見受けしますが?」
ちょ、ちょっと!!俺と比べんなよ!でも何も言い返せない俺……だって派手に遊んでたのも事実だし……
でも二村……いい気味。くくく、と喉の奥で笑いをこらえていると
「柏木さん!言っていいことと悪いことがあるんじゃない?名誉棄損で訴えるよ」と二村が顔を赤くさせて肩を震わせている。
「訴えたければどうぞ?こちらは証拠が揃っているので」
証拠……?
二村が緑川と瑞野さんの間で二股掛けている証拠?そんなものがあるのか!
この発言には二村が目を開いて一歩後ずさった。
「ああ、言っときますけどハッタリなんかではないので。私はそんな子ズルいことしません。あなたと違って。
潰すときは潰す」
瑠華は軽く拳を掲げると、ひらりと手を開いた。
そこに何かあるわけなんてないのに、瑠華の掌から何かが零れ落ちる幻影が見えた。