Fahrenheit -華氏- Ⅲ

計画の歪。


♥Ruka♥

どんなに精巧な計画を立てても、必ずどこかに穴はある。それを悟られないように、或いは相手の計画を探るのもまた一つの狙い。


あたしはどんな獲物でも狙ったものはとことん追い詰める。


あたしの性格を知らない人はラッキー、でも知らない人はアンラッキー。


そう、どんな手を使ってでも必ず闇に葬ってやる。


TRRRR…


短いコール音の後、すぐに相手は出た。


『もっし~♪』


明るい返事と共に、背後で何やら騒がしい人の声が入り乱れている。音楽も流れていた。そこがどこだか想像できなかったけれど、この時間帯から呑みに行っててもおかしくない人だ。


「今からお会いできませんか」


定時に仕事を終え、会社から出るとすぐさまあたしは葵さんに電話をした。


『今から?ごめん、今”仕事中”なんだ。あと一時間ぐらいで終わると思うから、こっち来てよ』と葵さんは明るい声で笑う。


仕事中?今はまだ6時を少し過ぎた所だけど。確か葵さんの働いているキャバクラは8時スタートだった気が…


と思ったが、詮索するのもすぐに終わった。大して興味もない。


『ちょっと分かりづらいから地図送る~』と言われ通話は一方的に切られた。


まだ「行く」とも「行かない」とも言っていないのに。相変わらずマイペースだ。


まぁこちらとしては今日絶対に会っておきたい理由もあるから断ることはないけれど。


すぐに地図が送られてきてアプリで検索すると吉祥寺になっていた。東京メトロとJRを二回乗り継いでいくのは面倒だ。あたしは走っているタクシーを止めた。


地図の目的地にたどり着くと、そこはそう大して大きくないCDショップのような建物が立っていた。大手のものではなく地元のこぢんまりとした感じ。意外だ。葵さんがこんな所に出入りしていたなんて。バイトと言うのもここの店員さん?間違いじゃないだろうか、と地図アプリを確認したが葵さんの指摘した場所はここで間違いない。


間口は狭く、店の入り口は一階にあるけれど、その横に地下へ降りる階段が着いている。


タクシーを降りると同時、一人二人と、ピンクの揃いのTシャツを着た男性が出てきた。この寒い中彼らはTシャツ一枚姿で、まるで寒さなんて感じないようなどこか高揚……と言うか興奮した様子で賑やかに喋り合っている。


数分待っていると、その人数がどんどん増えていき、ピンクのTシャツの男性たちで道が溢れかえった。


一種異様な光景を目に、あたしは目をまばたいた。


店のスタッフ、には思えない。仕事とは違う感じに思えたし、彼らは一様に興奮していて一段と賑やかだったから。


本当に葵さんがここに居るの?と疑い始めた時




「瑠華ちゃ~~~ん!」




同じく地下から出てきて黒いカットソーの上にピンクのTシャツ姿の葵さんを見つけたとき、少しばかりほっとした。
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