Fahrenheit -華氏- Ⅲ

葵さんの話によると『ゴマニ氏』は当然本名ではなく、SNSのハンドルネームみたいだ。葵さんはゴマニ氏の本名も知らない、と言う。葵さんとゴマニ氏の付き合いはここ二年程で、キッカケはゴマニ氏と仲良しのアイドルオタク仲間が急遽来れなくなって、ゴマニ氏がSNSで人を探していたときに葵さんがコンタクトを取ったみたいだ。


それからちょくちょく一人では行けないライブに葵さんがアルバイト代をもらって同行しているらしい。あんな恰好してるから一人でも全然平気かと思ったけれどゴマニ氏はどうやら一人で行くのに抵抗があるらしい。


世の中色々な方法でお金を稼げるのね。


あたしたちはそのCDショップから少し離れたカフェに落ち着くことになった。


コーヒーを飲みながら、あたしは今日二村さんと言い合った話を聞かせた。


「ええ!空汰に言っちゃったの?俺と空汰が繋がってること」


「ええ、ですから近々確認の連絡があるかと」


「そう言うことは先言っておいてよ~」


葵さんはカフェオレを飲みながら小さなため息。


「勝手なことをしてごめんなさい。でもどうしても今日怒りが収まらなくて。喧嘩を売る形になってしまいました」


「まぁあいつにムカつくことされてるからね~瑠華ちゃんは。今までよく耐えてきたと思うよ?」と葵さんは立ち直りも早く頬杖をついてのんびり。


「でもどうするのさー、俺があいつの差し金だって気づかれたら今後動きづらくなるよ」


「計算済です」


とは言っても午後の間急遽考えたことだけど。


「さっすが~♪で?どんな計画なの??」と葵さんはワクワク。


「葵さんは二村さんに何か言われたらクリスマスイブ、私と過ごすと言ってください」


「でもあいつとグルだって知られたら、それも疑われるんじゃ?」葵さんが目だけを上げる。







「なので急遽予定を変更して実際会いましょう」





あたしの言葉に


「へ―――?」葵さんは目を丸めて間抜けな声を出した。

< 725 / 828 >

この作品をシェア

pagetop