Fahrenheit -華氏- Ⅲ

「そだ、久しぶりに会ったしこれから四人で呑みに行かない?」


二村さんの提案に葵さんはおろかあたしも瑞野さんも目をしばたたいた。


二村さんは―――あたしと葵さんが”付き合っている”のかどうか見定めたいのだろう。


今のあたしたちの状況じゃ分が悪い気がするが、逆手にとって二村さんと瑞野さんの関係を明白にできるかもしれない、と思えた。


「……じゃぁ少しだけ」あたしが言い出すと、まさかあたしが乗ってくると思ってなかったのか二村さんがちょっとだけ驚いたように目をぱちぱちさせ


「えー、せっかく二人っきりなのに、幼馴染とダブルデートぉ?」と葵さんが不自然じゃない程度にノってくる。


「葵さんにとっての幼馴染には私にとっても大事な人に代わりません」と言うと「そっかー」と葵さんが嬉しそうに頷く。


「じゃさ、近場に良さげな居酒屋見つけたんだよね~、そこにしない?」と二村さんが言い出し、話はとんとん拍子にまとまってしまった。


二村さんが言う”良さげな居酒屋”とは確かにThe大衆居酒屋とは違って少し高級感がある和食居酒屋っぽいところだった。用意が良いって言うのかな?こんな流れになるってまるで予想していたみたいに思えたけれど、流石の二村さんも葵さんとあたしが一緒に居るとは思わなかったよね。


と言うことは、瑞野さんと二人で行くつもりだった―――?


平日とあって、店はそれはそれ程混雑してはなく、あたしたちはちょうど空いていた個室に通された。


あたしと葵さん、二村さんは生(ビール)を注文して、瑞野さんだけはオレンジジュースだった。


「ミミちゃん、どうしたの?具合でも悪い?」と葵さんが気にして聞いた。あたしは瑞野さんと呑みに行ったことはないけれど啓の話からするとあまり強くはないらしい。


「ちょっと風邪気味で……それに最近呑み過ぎちゃって色んな人に迷惑かけたから今日はソフトドリンク」と瑞野さんは恥ずかしそうに下を向き、無理やりと言った感じでメニュー表を開く。


席順はあたしの向かい側に瑞野さん、はす向かいに二村さん、二村さんの向かい側、あたしの隣に葵さんと言う順番で席に座っている。まぁこれが妥当なフォーメーションだろう。

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