Fahrenheit -華氏- Ⅲ

この店のお手洗いは入り組んだ廊下の奥にあるようでお手洗いの矢印を頼りに奥へと進んでいくと、女性用男性用と別れたお手洗いが出現して少しばかり安心した。


女性用の扉を開けると、手前に洗面台と奥に個室が二つ連なっていた。


その個室の一つは扉が開いていて、


瑞野さんがその場でしゃがみ込み便器に向かってえずいていた。





「大丈夫ですか!」


慌てて駆け寄り瑞野さんの華奢な両肩に手を置いた。


「か……柏木補佐…?」


瑞野さんは口元を拭いながら涙目になった目をあたしに向けてきた。


「どうしました!何か悪いものでも…」瑞野さんの背中に手を這わして撫で上げると


「違……」と瑞野さんの涙が溜まった目じりから涙が頬を流れた。


そう言えば瑞野さんは今日具合が悪いからと言う理由でアルコールを口にしていなかった。







「まさか―――」






あたしが目を開くと、瑞野さんは声をあげて泣き出し


「お願いします!誰にも言わないで!」と叫ぶように言いあたしの腕を力強い腕でつかんできた。





何てこと―――





あたしも思わずその場に膝をついてしまった。


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