Fahrenheit -華氏- Ⅲ

葵さんは水族館での話を多少誇張して話し、二村さんがそれに頷いている、のを繰り返していたが






『まさかミイラ取りがミイラになるとはな~。でもそれがあの女の手かも。ハニートラップにはまったのはお前の方かもな』




と言い出した時、ガンっと小さな音が聞こえた。隣の葵さんを見ると葵さんはつまらなさそうに頬杖をついて「これ、これ」と言って生ビールのグラスをふらふらさせていた。どうやらそのグラスをテーブルに叩きつけたようだ。


『何………お前、柏木さんにマジ…なの?』二村さんのたじろいだ声が弱弱しく聞こえてきた。


『さっきから何?俺が惚れた女のことあれこれ言いやがって。お前こそミミちゃんとうまくいってないからって俺たちのこと疑ってばかり』



俺が―――惚れた女―――?



『瑠華ちゃんは誤解されやすいけど、一見冷たいところも怖いところもあるけれど根はすっげぇ優しくてあったかくて、サイコーにいい女なんだよ。今まで俺が付き合ってきた中身も外観もからっぽな女たちとは全然違う』





葵さん――――


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