Fahrenheit -華氏- Ⅲ


勘違いしないで欲しい、これはストーカーとは違って……って、やってることストーカーそのものじゃねぇか!


給湯室に向かうと、確か広報課の女子社員たちがやっぱり給湯室でだべっていた。こないだの総務課の女子社員と言い、ここは女子のたまり場か?仕事しろよ。


「ねー、見たぁ瑞野さんの出向」


「見た見た~、これみよがしに私服で来てさぁ。外資の役職もついてない社員だったらうちらと同じ制服着るべきじゃない?」


「しかも服が秘書課に居るよりあざとさ増してない?神流部長に媚びっ媚び」


え?そうか?シロアリよりはだいぶましだぞ??


そう思っていると


「瑞野さんはあくまで”秘書課”からの出向。言わば私たちの手伝いをしてくれてる方です。制服着用の規定はありません。


それに彼女はあなた方が想っている以上に有能です。少なくとも就業時間内に無駄話をする方ではありません」


瑠華が給湯室に一歩足を踏み入れ、ズバリと言い切ると広報課の女の子たちは揃って顔を歪めた。


「なんか気分悪い、行こ」


何だよ、その女子高的なノリは。


彼女たちは俺がいると気付かなかったのか、俺を見るとバツが悪そうに顔をちょっと赤くしてそれぞれ頭を下げ俺の横を通り過ぎて行った。


瑠華は何事も無かったかのように、”外資物流”と書かれた棚から自分のと俺のマグカップを取り出すとインスタントコーヒーの瓶を開ける。


それは良いけど……これじゃ瑞野さんのイメージだけじゃなく瑠華にも害が及ぶのでは??


まぁ悪いのは悪口言ってた広報課の女子社員たちだけど。


ま、本人気にしてないようだけど。


そんなことを思いながら瑠華の後ろ姿を見守っていると


「部長」


前触れもなく瑠華が振り返った。


突然のことでびっくりして「は、はい!」とやっぱりここでも声が裏返る俺。てか俺がついてきたこと気づかれてた??


突如瑠華の顔がズイと迫ってきて


「瑞野さんはあざといですか?」と質問してきた。


近っ!近い近い!


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