Fahrenheit -華氏- Ⅲ

瑠華が何を考えているのか分からず……まぁこれに関しては今に始まったわけではないが、少なくとも瑞野さんに敵意を感じているわけではなさそうだ。


瑠華は手際よく俺と瑠華の分のコーヒー、そして瑞野さんにはこれまた”外資物流”と言う棚から取り出したピンク色をしたティーパックの箱でそこから一つののティーパックを入れて湯を入れると、鮮やかなピンクをした色が広がっていった。


「あれ?瑞野さんはコーヒーじゃないの?それ何?」


瑠華はゆるりと振り返り、無表情に俺を見据えながら


「先ほど、瑞野さんはコーヒーよりローズヒップティーが好きだと伺いました。私も好きなのでストックしておきましたので今回はこれに」


え?瑠華が持ち込んだの?いつの間に。


やっぱり―――瑠華は瑞野さんを敵対視しているわけではなく、気を遣っている?


やはり単なる出向、秘書課から預かってる身だから大事にしているだけ??


むぅ、分からん。


自部署に戻ってコーヒーを飲みながら目の前の(とは言ってもちょっと距離はあるけれど)瑞野さんの顔を凝視した。瑞野さんはマグカップを大事そうに両手に包みゆっくりと瑠華の淹れたローズヒップティーを口にしている。


む゛~~、確かに他の女子から見たらこの仕草はあざとい気がしないわけでもないが……


でもあからさまにシロアリ緑川みたいに俺に媚びてるって感じはしないけどなー。


「それ、何ですか?変わった香りがしますね」と、佐々木が頑張って(?)瑞野さんに話しかけている。


「ローズヒップティーです、あたし大好きなんです」


にこっと佐々木に微笑む瑞野さん。あざとい??佐々木も瑞野さんの笑顔に一発KOってとこだ。うーん……瑞野さんが何を考えてるのか分からん。


考え事をしながら仕事をしているとあっという間に昼休みに入った。


さて、ここでまた問題が浮上する。


通常なら瑠華と佐々木を先に昼食に向かわせるが、そうしたら必然的に俺と瑞野さんが一緒??これ以上あらぬ噂を立てられたくない。それにクリスマスイブの約束にまだYESともNOとも答えていないからな。かと言ってそれ程瑞野さんと瑠華が親しいとは思えない。佐々木と瑞野さんと言う組み合わせも、両方気を遣うだろう。


どーすれば…


とまたまた問題を抱える羽目になった俺が考え込んでいると


「部長」瑠華が立ち上がった。


「は、はい!」


今日何度目になるだろう返事をして瑠華を見ると


「昼食、瑞野さんと行っても宜しいでしょうか。彼女はまだここ(外資)に来たばかりで分からないことだらけだと思いますので」


え??


そー言ってくれると一番助かるけど。


瑠華が何を考えているのか分からず、けれど相変わらずの無表情、その黒い瞳からは何も読み取れず


「じゃぁお願いします」と答えるしかなかった。


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