Fahrenheit -華氏- Ⅲ

び……くりしたぁ…


だって気配を感じなかったもん。


「俺も瑞野さんの急な出向の件が気になって綾子ちゃんのとこ訪ねて行ったら先客がいたんだよね」と桐島は俺を見る。


「それで俺の後を尾けてきたのか?」


呆れて物も言えない。


「や、後を尾けなくても啓人の行く先なんて簡単に想像つくから」


と桐島はあっさり言って手を軽くあげる。


桐島……あなどれねぇヤツだぜ。


てか怖っ!


「当の二人はどうなのさ、柏木さんと瑞野さん。いがみ合ってる感じ?」と桐島に聞かれ


「いや……よく分かんねぇけど瑠華は瑞野さんに対して敵対視してなさそう。さっきだってさー、瑞野さんの為にローズヒップティーを淹れてたんだぜ?」






「ローズヒップ?」




桐島が目を開いて口元に手をやった。


何だ?


ローズヒップなんて女子がいかにも好きそうなハーブティーだろ?


桐島は少し考えるように額に手を置き、


「もしかして―――」と言葉を発した。


何?ローズヒップティーで異動の理由が分かったわけ??


んなわけない、ない。


桐島は少し考えるようにまたも口元に手をやり、


「啓人、この件はあまり深入りしない方がいいかも」と真剣に言い放った。


「は?深入りも何も……てかお前は何か分かったワケ?」


俺と裕二が桐島を注目すると


「いや、あくまで仮定だから今は何とも言えない」ともったいぶる。


「何だよ、思わせぶりな態度とりやがって」顔をしかめて桐島を睨むと、桐島はいつもの調子に戻って両手をあげ


「今のことは俺なりにもうちょっと調べてみる。ハッキリしたことが分かったら教えるから」


桐島……?


いつもふわふわしてどっちかっていうとマイペースだが、今日こそ頼りがいがある日はない。


桐島!


KI・RI・SHI・MA!!


心の中で声援を送っていると


「麻野主任ー、ここでしたか?」と裕二の部下?が裕二を呼びに来た。俺を桐島が居ることを認めるとその社員は一瞬身を固まらせ、


「す、すみません!ちょっとトラブルが」と慌てて言った。


「わり、俺抜けるわ。俺も綾子にさりげなく聞いてみるから、まぁ今は様子見しとけよ」と俺の肩をぽんと叩いて出ていく裕二。


裕二―――


綾子、『女を甘く見ると痛い目に合うわよ』そう言ったが、オトコの友情も舐めんなよ!


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