Fahrenheit -華氏- Ⅲ


20XX年12月19日 月曜日


あれから数日経った。


日は経ったが、瑞野さんの出向理由は今だ判明せず。そして俺が想像した通り二村が瑠華にちょっかいをかけてくることもなかった。最初は波乱が待ち受けているかと思ったが意外にも平和。


しかし瑠華が瑞野さんへの対応は冷たいようにも感じるし、そうじゃない気もする。


例えば


「瑞野さん、資料運び手伝ってくれます?」といくつかファイルケースを詰めた段ボール箱を佐々木が一つ持ち上げながら聞いた。その段ボール箱は3つ程あって、通常なら瑠華が何も言わずとも運びに行くがこの時瑠華は真剣にPCに向き合っていたし、頼み事をするのなら役職付きの瑠華より秘書とは言え平社員の瑞野さんに頼んだ方が自然だ。瑠華はよっぽど難しい資料なのか目は真剣そのもの。そんな中佐々木も瑠華に頼めないよな。


「分かりました」瑞野さんはフットワークも軽くこちらが何かをお願いすると必ず実行してくれようとするが、


「私が運びます。瑞野さんは先ほどお願いした資料作りお願いします。そちらが優先です」と瑠華がPCから目を離し、低く言い


「あ、はい……分かりました…」瑞野さんがおずおずと席に戻った。


その顔は一見すると怒っているようにも見えた。


「部長」


段ボール箱を持ち上げながら瑠華は何故か俺を指名。


「は、はい!」


「瑞野さんはあくまで秘書課の出向。大事な社員に怪我などさせてはいけません。パワハラで訴えられたらどうするんですか。会長に何と顔向けしていいのやら」


こっわー!


「は、はい……」


それ、佐々木に言ってくれよ。元々佐々木が言い出したことなのに。まぁ監督責任不届きに問われるのは最終的には俺であって。


怖いよ、瑠華ちゃん。


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