Fahrenheit -華氏- Ⅲ
と言うわけで佐々木と瑠華が資料の詰まった段ボールを資料室に運び、借りてきたファイルを資料室に返しに行くことになった。
ってことは……
瑞野さんと二人きり。
き、キマヅイ……
俺は極力瑞野さんと目を合わせようとはせずPCに向かってはいたが……
ふわり、と瑞野さんの淡い香り……香水とはいかないまでもシャンプーかな……が、香ってきて何となく顔を上げると
「部長」
すぐ傍で瑞野さんが立っていた。
ぅを!!
「ど、どーした?分からないことでも……」
「あの、こないだの件……クリスマスの…」瑞野さんはまるで内緒話をするように声を潜めて俺の耳元でそっと囁いた。そう言えばここ最近瑞野さんとここ以外で二人っきりになることはなかった。昼食も瑠華と一緒に摂ってるし。瑞野さんが喫煙者でないから喫煙ルームでバッタリと言う可能性もない。
来た!!まだ未解決問題!
言いかけた言葉を俺は遮った。
「ちょっと待って携帯にメール。急ぎの件だからすぐ返信しなきゃ」
こうなったら最終手段だ!あんまりこの手は使いたくなかったんだが!
頼む!今頼れるのはあんたしかいない!
メールを打ち終わって
「ん?」俺はわざとらしく聞いた。
「えっと……あの……こないだ言ってた件、クリスマスイブ、セントラル紡績さんとmother's gateの件ですが、調べたらもう柏木補佐が対応済でしたね。はぁ…凄いですねあの人…」
「え…!ああ、そうみたいネ」
ホントはもうずっと前から話はまとまっていた。瑠華がまとめた。それを咄嗟とは言え嘘をついたが、瑞野さんは勘違いしてくれたようだ。ふーセーフ。
「でしたらフリーってことですよね」
セーフ…じゃない!