Fahrenheit -華氏- Ⅲ
「今度こそ結婚できるかも!って思ってたのに!」
結婚?
だってまだデートして三回目なのに……それともこれが最近の結婚の流れなのだろうか。
「あたし、もう28なんですよ!後がないって言うのに!」マナミさんは目を吊り上げたまま、まるで目の前に憎い自称伊藤が居るかのようにあたしたちを睨む。
「「28?」」
これにはあたしも…そして瑞野さんも驚いた。
正直、あたしより年下だと思っていたが、意外に年上だったことに驚いた。
けれどマナミさんはすぐに今にも怒鳴りだしそうな気迫を仕舞いこみ、しゅんと項垂れ
「あたし……ダメ男ホイホイなんです」と呟いた。
「ダメ男ホイホイ?」聞き慣れない言葉にあたしは思わず瑞野さんを見ると、彼女はちょっとだけ苦笑をしただけで説明はくれなかった。
「学生時代から八年付き合ってた彼は仕事もせず完全なヒモだったし、次に付き合った男はあたしの他に三人も付き合っていた女が居たし、しかもそのうちの一人をあたしのアパートに連れ込んでまさに最中だったし」
ぅわ……
返すべき言葉も浮かばない。
定食についていたワカメスープに手を伸ばすと
「あたしも好きな人に二股掛けられてたからその気持ち分かります」
と瑞野さんが真剣に頷いていた。
「瑞野さんみたいな可愛くて若い人でも?」とマナミさんが驚いたように目を広げる。
あたしはちょっとため息を吐いた。二村さんのことね、きっと。
「その定義で言うと私もそうですね。私よりお金が大好きだった男。おまけに父親に対するコンプレックスの塊」
―――ジェイク
「次から次へと良く見つけてくるわ、って言うぐらい浮気しまくる男。しかも別れ際膨大な手切れ金を渡してきてカネで解決しようとしてきたクズ男」
―――マックス
「セックスフレンド関係で良かったのに、何故か彼氏に収まったひと。結局別れてしまったけれど」
―――啓
大好きだった。最初は体だけの関係が楽で心地よかった。けれど彼の気持ちを知り、彼があたしを受け入れてくれて、体温を共有してもっともっと―――欲しくなかった。最初で最後の唯一無二のひと。