Fahrenheit -華氏- Ⅲ
俺は以前瑞野さんと二人で入ったファミレスを指定した。会社からちょっと距離があるし、客の出入りも多い。話すには打ってつけだ。
指定した時間通り、と言うよりも俺より先に桐島と裕二が到着していて
「おっせーよ」と裕二が眉を吊り上げていた。
「わり」断りを入れて特にメニューも見ることなく本日の日替わりランチを注文した。
「で?桐島、話したい事って何?」とせっかちに聞くと
「瑞野さんの動向、ちょっと探ってみた」と思いがけない発言に俺と裕二は思わず顔を合わせた。
『俺なりにもうちょっと調べてみる』とは言ってたが、まさかこんな早くに有言実行するとは。
桐島はたまに俺以上に行動力がある。
「瑞野さん、ここ一週間殆ど定時退勤してるよね。で、そのあとをちょっと尾けてみたんだ。そしたら…」
尾けた!?
「そしたら……?」ごくりと喉を鳴らすと
「お待たせいたしました~、スパゲッティカルボナーラです」と店員が桐島の前にカルボナーラを置いていった。
冷めると不味くなると思ったのかマイペースに桐島はカトラリーからフォークを取り出している。
「おい!瑞野さんはどこへ行ったんだよ」と前のめりになると
「お待たせいたしました、和風ハンバーグランチです」と今度は裕二の前にハンバーグが置かれ、
タイミング悪っ!
「まぁまぁそう焦らないでよ」とマイペースにカルボナーラをフォークに巻き付け桐島はのんびり。しかしその巻き付けたパスタを口に入れる前
「瑞野さんが向かった先、表参道の産婦人科だった」
産婦人科―――?
まさか……!