Fahrenheit -華氏- Ⅲ
いや、しかし表参道の産婦人科と言えば瑠華の通っている病院がある場所だ。確か前、緑川にも紹介してたっけっね。
俺の分の本日の日替わり定食、鶏のトマトソース掛けとミニハンバーグとエビフライと言う組み合わせの鉄板が届き、しかしそれらにすぐに手を付けるきになれなかった。
「何で瑞野さんは産婦人科に?」
「さぁ、流石に男の俺が一人で入れる場所じゃないし」と桐島は苦いものでも噛んだかのようにこめかみをかいた。
確かに。
「以前、緑川が子宮きんしゅがどうのこうのとかで、瑠……柏木さんに表参道の病院を紹介してもらってたけど…」
「その可能性もあるな。綾子も小さいが筋腫があって月に一度は通ってるらしいし」と裕二が和風ハンバーグの付け合わせのブロッコリーを口に入れ「マリちゃんに協力してもらって探ってもらうってのは?」とフォークの先を桐島に向けた。
「やめろ、マリちゃんまで巻き込むな」俺は裕二の手を払い、
「そうはしたいけどマリは行きつけの婦人科があるし、第一あの二人顔見知りじゃない?東京で産婦人科がどれだけあると思う?偶然を装うのは怪しいよ」
確かに、桐島の言う通りだ。マリちゃんと瑞野さんはこないだのハロウィンパーティーで顔を合わせてる筈だから。
「でもさ、その産婦人科って柏木さんが以前、緑川さんに紹介したところだろ?だったら理由は同じじゃない?
お前の考えてることは分かるよ。もしかしてーって思ってるかもしれないけど、だったら猶更緑川さんと瑞野さんが顔を合わせるのはマズイんじゃないの?そこんとこ柏木さんも考えてるって。お前の考え過ぎだ?」
確かに……裕二の言う通りだ。
桐島はお冷を飲みながら小さくため息。
「思ったより難しい状況かもね。
それにしても、ここのカルボナーラ、おいしくない」
桐島の言う通り。
俺も―――出された料理が急にどれもおいしくなさそうに、目に映った。