Fahrenheit -華氏- Ⅲ

結局分からず仕舞いだ。でも桐島はよくやってくれたと思っている。


「でも、もし妊娠してたらさー、誰の子だろうな」と裕二が美味しくなさそうなハンバーグを切り分け、しかしそれを口に入れることはなかった。


「さぁ、知らね。言っとくが俺じゃねーぞ。二村じゃね?」


「二村くんは知ってるのかな?瑞野さんが産婦人科通ってるってこと」桐島は不味いカルボナーラを早々に片付けるつもりか口をせっせと動かしている。


「どうかな、あいつんとこうちと違って残業が多いみたいだから知らないんじゃないの?瑞野さんがあいつに言ってたら分かんねぇけど」


「言わねぇだろ、緑川さんが妊娠してるって噂、もう会社中に広まってるぜ?そんな中言えるか?」と裕二はハンバーグの欠片を口に放り入れた。


そう、だよなー……


もし、そうなら……瑞野さんはどうするつもりなんだろう。瑠華は何で産婦人科を紹介したんだろう。


緑川の妊娠は完全なる嘘だ。もし……もし瑞野さんが本当に妊娠しているのなら……?二村のことだ、常務も絡んでくると思えば瑞野さんは間違いなく中絶を勧められる。そんなことを考えていると背中に冷たい何かが滑り落ちた。


やめやめ!こんなこと考えるの。ただでさえ美味しくなさそうなのに、食事が不味くなる。


< 796 / 833 >

この作品をシェア

pagetop