Fahrenheit -華氏- Ⅲ
俺は頭を振り、二人の女の姿を頭から振り払おうとしたが、食事中もずっと彼女たちの顔を追い出すことはできなかった。
不味い食事を何とか平らげ、俺らが社に戻ると問題の女二人は会話もなく黙々とPCに向かって業務に当たっていた。佐々木は電話中で
「はい―――はい、承知致しました。では19時に宜しくお願い致します。失礼します」
と言い、通話を切った。
「ただいま戻りました~」とのんびり言うと瑠華と瑞野さんは「「おかえりなさい」」と返してくれたが、佐々木は
「部長ー、今TUBAKIウエディングの香坂さんから電話が掛かってきましたよ。部長に繋がらなかったからわざわざこちら(直通電話)まで」
「え?」ヤッベ……話に夢中で全然気づかなかった。
瑠華がちらりと俺を見上げ、しかし何も咎められなかった。ふー、セーフ……とか思ってる場合じゃない。
「香坂さん、何て?」
「今日のマルーナホテルの会場の件で、香坂さんがいらっしゃらないと出入りできないので現地で19時集合でいかがですか?とのことです」
「19時ね、オッケー」
「瑞野さんは定時後のことなので帰ってください」と俺が何か言う前に瑠華が言い出し、
「いえ、あたしもお付き合いします。今日は体調も良いし。練習場面見られると言うことですよね」瑞野さんはワクワクと言った感じで顔の前で手を合わせる。
体調―――?やっぱ瑞野さんは―――
あー、ダメダメ。無粋なこと考えるのはよくない。
「しかしあなたはあくまで外資への出向と言う形です」と瑠華が少しだけ眉間に皺を寄せると
「そう……ですよね」と瑞野さんはしゅんと項垂れた。
これじゃ仲間外れにしてるように見える。
「ま、まぁさ、瑞野さん予定が大丈夫なら付き合ってよ。人数が多い方がやりやすいし」
と俺が慌てて言うと、瑠華は今度俺の方を睨んできて、思わず口元を引き締め体を逸らすと、小さなため息を吐き
「分かりました」と小さく頷いた。