Fahrenheit -華氏- Ⅲ


二人してレジに向かう。


レジの前には意外と列ができていた。


「今日大抵の雑誌の発売日だから混んでるのかな~」佐々木さんは背伸びして列の前の方を見ている。


あたしは手の中にある漫画本の裏表紙を眺めていた。


「それ、僕結構好きで実はアニメのDVDボックス持ってるんですよ。気に入ったのなら今度持ってきますよ」と佐々木さんが申し出てくれて


「本当ですか?嬉しいです」と素直な気持ちを口にする。


「それよりもあの曲、いいですよね。CDとか出ているのでしょうか」


「出てると思いますが、一曲だけならダウンロードした方がいいと思いますよ?」


「ダウンロード?」


「携帯でできますよ」と話しあっているうちに緩やかに列が進んでいく。


一歩を踏み出そうと思ったけれど、あたしの体はふらついた。


「大丈夫ですか!」


咄嗟に佐々木さんがあたしの両腕を持って支えてくれる。


佐々木さんは――言っちゃなんだが、華奢でひ弱な感じなのに、その手は力強くて、男性の手ははやはり女性と違うのだ、と言うことを改めて知った。


「大丈夫です、最近食欲がなくて…あまり食べてなかったので…身体に力が入らなくて」


思わず本当のことを言ってしまうと


「今日もサンドイッチ一口でしたもんね。ちょっと心配です」佐々木さんは眉を寄せる。


そうこうしているちに会計があたしたちの番になった。三個あるレジでお互い本を購入して


「それでは私は」と佐々木さんと別れるつもりだったが


「あの、柏木さん!あの…僕と、おおおおおお…」


「お?」


「お、…お茶しませんか?」


意外な提案にちょっとびっくりしたけれど、有り余る時間を消化するにはちょうどいいかもしれない。


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