Fahrenheit -華氏- Ⅲ
「I told you. I can't go back to you under any circumstances.
(言ったでしょう?どんなことがあろうとあたしはあなたの所に戻る気になんてなれない)」
そっけなく言って今度こそソファを立ち上がろうとしたが、その手をまたもマックスが引き寄せる。
「This is the guy you're dating right now, right? He seems pretty light to me. And I don't think he's your type.
(君が今付き合ってる男はこの男だろ?随分軽そうに見えるが。それに君の好みとは思えない)」
マックスが懐から一枚の写真を取り出したとき、心臓が一瞬ドキリとした。啓―――とは”今は”付き合ってない。
けれど彼の存在を嗅ぎつけられるのは厄介。マックスは簡単に啓なんて捻りつぶすだろう。
しかしテーブルに滑らせた写真は
啓じゃなかった。
葵さん―――?
それはどこか盗み撮りしたものだろう。あたしと葵さんがファミレスでコーヒーを飲んでいる所だった。遠目だったから少し自信がないけれど、この目立つピンクの髪は葵さんに違いない。撮られた時期は分からないけれど服装からここ最近のものだと気付いた。
きっと日本の興信所でも頼ったのね。どこまでも卑劣なの。
でも、マックスは勘違いして―――?
写真を手にマックスの方を見ると
「Looks like you're right. Though it doesn't seem very tough to take you away from a guy like this.
(図星だって顔してるね。こんな男から奪うのは手ごたえがなさそうだが)」とマックスがあたしの手から写真を取り上げる。
このまま葵さんを彼氏だと思わせておいた方が今は得策だ。
「Don't underestimate him, okay? I've been known to act unpredictable myself.
(彼を甘く見ない方がいいわよ?あたしだって予想不能の行動されるんだから)」
ホントのことだ。
しかし葵さんのことを気づかれたらいずれ二村さんに辿り着くかもしれない。
それだけは避けなければ。
マックスより先に―――あたしが二村さんを倒す。