Fahrenheit -華氏- Ⅲ

女優。



♠ K ♠


瑠華が俺の前で泣いている。その涙を悟られないように横を向いて腹の指で涙の雫を拭っている。


だめだな、俺瑠華を泣かしてばかりだ。


「―――ごめん………俺…何も考えもなしに……」


項垂れると、瑠華は目じりの涙を拭いながら


「私もすみませんでした。あなたの前だとどうしても感情的になってしまう。もっと冷静にならなければならないのに。


真咲さんの名前を出したのも軽率でした」


「いや、真咲の件を聞いて冷静になるのは俺の方だった。でも君が冷静に―――なる必要が?」


まだ完全に乾ききっていない涙が浮かんだ目で瑠華が俺を見てくる。





「では一瞬だけ感情的になってもいいですか?


瑞野さんとは本当に何もなかった―――?」





俺はゆっくりと頷いた。


そしてとうとう瑞野さんに脅されたことを包み隠さず話すことになった。事故に遭ったとき車の中に家のキーが入ったキーケースを車に残してきたこと、行く当てがなかったが瑠華と泊まるつもりでこのホテルをリザーブしていたことを忘れていて、キャンセルしてなかったことを思いだしたことも。そして瑞野さんがここまでついてきたことを。


しかし瑠華はそれ程驚いた様子を見せなかった。


「驚かないの?」


「”あの”二村さんと付き合っていたひとですよ?一筋縄ではないこと何となく想像はできてました」


なるほど!


「今回、瑞野さんはクリスマスイブに緑川さんを選んだ二村さんに当てつけのようにSNS投稿しましたが、二村さんか週明け何らかのアクションがある筈。彼女はそこのリスクを考えてるんでしょうか」


「さぁ、でも二村だって”本命”とクリスマスイブ過ごしてたんだぜ?あいつがとやかく言える立場か?」


「嫉妬で何か嫌がらせされないといいですけどね、啓に」


え、俺!?


「階段から突き落とされたり」


え!!?階段!!?


てか巻き込まれただけじゃん俺!!


「ところでそっちは?ユーリと一緒じゃなかったの?」


思わず聞くと


「何故それを?」と瑠華が目を開いた。


は!しまったぁ!!

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