Fahrenheit -華氏- Ⅲ


口が滑ったって言うのはこういうことを言うんだろうな。


「それはあるツテからの情報で……」ごにょごにょと言い訳をすると


「綾子さんですね」とあっさり。


ドッキンこ!何故それを!


「ハロウィンパーティーのときマックスと綾子さんが名刺のやり取りをしているのを見ましたから」


そーだったの!?じゃぁ知らなかったのは俺だけってこと??


「まぁ目撃しなくてもあの男のやりそうなことは大体想像がつきますがね」瑠華は吐き捨てるように言った。まるでゴキブリと話したことを思いだしたような物言いだ。「綾子さんはあの男のタイプでもありますから」


さすが瑠華、元夫のこと知り尽くしてんな~


俺はゴキブリ以上でありますように!と切に願った。


「それよりもさ、瑞野さんすっげぇ爆弾持ってたぜ?”アレ”があれば緑川との結婚を破談にすることは可能だが、瑞野さんはまだ使う気がないらしい」


「爆弾?」瑠華が眉を吊り上げた。


俺は覚えている範囲でさっき瑞野さんが見せてくれた動画の内容を聞かせた。


瑠華は腕と足を組み俺の話に耳を傾けながら時折ワインを口にしている。


しかし時折眉を吊り上げながら


「美味しい筈のワインが不味くなるような話ですね」と目も吊り上げている。


「だよなー、緑川の子供を托卵に仕立て上げるって…てかそもそも緑川妊娠してねーし」


俺が額に手をやると


「ご存知だったのですか」と瑠華が言い「どうせ君の入れ知恵だろう?」と無理やり笑うと瑠華もちょっと笑った。「あなたには隠し事はできませんね」


「その瑞野さんの爆弾と言うものやらを手に入れられないでしょうか」


「どうやって?スマホは本人の寝てる近くに置いてあるし、そもそもロックが掛かってるんじゃないの?」


俺は言ったが瑠華は立ち上がると瑞野さんが眠っているであろう寝室まで歩いて行った。
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