Fahrenheit -華氏- Ⅲ
な、何をする気だろう……気になって俺も瑠華の後をそっとついていった。
瑠華がそっと瑞野さんの寝室を開けても彼女は起きだしてくる気配はなかった。
案の定、ピンクのケースに収まったスマホは瑞野さんの眠っている近く、ベッドの上に転がっている。
瑠華は瑞野さんに気づかれない様スマホを手に取ると、それをじっと見つめて、入り口の方で様子を見ていた俺に一つ頷いた。
何をするのだろう。
そっと様子を窺っていると、瑠華は瑞野さんの羽毛布団から出ている手にそのスマホを近づけ、人差し指をスマホの画面にそっと押し付けた。
なるほど、指紋ロック解除か。
瑞野さんは手を触られても起きだしてくる気配がなかった。そこにちょっとほっ。
瑠華はそのまま何かの操作をして、五分も経たないうちにあれこれと操作を続け、スマホを元にあった場所に戻した。
そしてまた抜き足差し足でこちらに戻ってくると、元いたソファに腰掛け、今度は瑠華自身のスマホを開いた。
「ど、どーしたの?」
「データを転送しました。もちろんバレないように送信記録は削除済なのでご安心を」
おお!なるほど!
転送された録画画面を改めて見た瑠華は顔を思いっきりしかめた。
「こんなバカげた計画。うまく行くわけないじゃないですか。Stupid?(バカなの?)」
る、瑠華怖いよ……
「瑞野さんの気持ちが離れていったこと、このバカな男は知らないようですね。自ら破滅の道に向かうとは。
頭が良いと思ってましたが、それは私の間違いでした」
「だよなー、これじゃ瑞野さんじゃなくても誰でもドン引きだっつうの」
「しかしうまく行く行かないとは別として、この発言は瑞野さんの言ったまさに”爆弾”これは私たちの間で共有しておきましょう。窮地に陥ったときに使えるように」と言って瑠華はまたもスマホを触り、今度は俺の方のケータイがピコンと音を鳴らした。
動画が送られてきたようだ。
「でもあくまでこれを使うのは瑞野さん。愛する瑞野さんから印籠を渡されたらあの男立ち直れないでしょうね」
くすっ
瑠華は口の端で小さく笑った。
瑠華サン、怖いデスよ……