Fahrenheit -華氏- Ⅲ
瑠華の発想もちょっと怖いが、元を正せば一番いけないのは二村だ。因果応報ってヤツだな。
「ところでそっちは?ユーリが一緒だから当然マックスも一緒だったんだろ……」と本来一番聞きたいことがようやく口に出せた。
「どうもこうもないですよ。あの男は二村さんと同等のサイテークソ野郎」
瑠華ちゃん、最近口が悪いわヨ。
「また復縁を迫れた?」目だけを上げると
「あー!面白くない」と言って珍しく瑠華が声を荒げ、空になったグラスにワインを注いだ。
「理由や結果がどうであれ、私は今あなたと居られることが嬉しいのです」
嬉しい……俺もだよ!って言いたいところだけど、その無表情で言われてもねー…
ぜんっぜん嬉しさが伝わってこないんだけど。
「まさかとは思うけど瑠華ってユーリの前でもそんなんなの?」
「まさか。ユーリは私のお姫様ですからね」瑠華はちょっと笑った。ユーリのことを思いだしたのかもしれない。その淡い笑みが
「きれいだ」
俺の言葉に瑠華は目をぱちぱち。
「さっきも言われましたが、今日の私あまり良くない状態ですよ?髪も巻いてないし化粧だって必要最低限だし」
「さっき?誰に?マックスにか!」
「………」
瑠華は黙り込んだ。
やがて「あの男は今更そんなこと言いませんよ」とボソ。
じゃぁ誰ヨ!
くっそぉ!どこかでナンパでもされたんか!?
”俺の”瑠華は”俺のだ”!
と思って、思いついた。
俺は慌ててケータイを取り出すとカメラ画面に設定して瑠華に向けた。
「何するんですか」瑠華が目を吊り上げて訝しむ。
「さっきみたいに笑ってよ。ユーリのこと思い出してさ」
瑠華はぷいと横を向くと
「笑顔の安売りはしません」とあっさりきっぱり。
「そんなこと言わないでさ~」俺は何とか瑠華を笑わせようと、脇腹をこちょこちょとくすぐった。
「ちょっ!やめてください!」瑠華はくすぐったさに耐えられなかったのか声をあげて笑いだした。
よし!チャンスだ!シャッターを切ろうとしたときだった。
バタン!!
ホテルの部屋の扉が派手に開く音がして俺たちは揃ってその音のする方へ顔を向けた。