Fahrenheit -華氏- Ⅲ
そこから一時間程かけて何とか六本木に着くとロビーの椅子で座ってスマホを触っていた心音の姿を見て少しほっとした。どうやらトラブルも起こさず大人しくしていたみたい。心音のその隣に大きなキャリーケース。
また勝手にどこかへ行って迷惑をかけてるんじゃないかと思うと心ここにあらずだった。
「心音!」心音の所に走り寄ると
「瑠華、MerryChristmas!」と心音が立ち上がり、私たちはその場でハグ。
心音の体温と香り、それほど時が経ってないというのに酷く懐かしく思えて安心できた。
「少し痩せた?」心音があたしの両肩に手を置いて少し心配そうに眉を寄せる。
「最近はちゃんと食べてるけど、そう見える?」
「不健康そうまでいってないから大丈夫ヨ」
心音はウィンクすると親指をちょっと立てる。
「今日、マックスとユーリと会う?」
「会わないわ。会うとまた離れがたくなる。顔を見られただけで幸せだったから、これでいいの」
あたしが目を伏せて言うと
「瑠華」心音はもう一度あたしを抱き寄せて抱きしめてくれる。
「立ち話はなんだし、部屋へ行ってコーヒーでも飲む?」提案すると
「OK♪」
そうしてあたしたちは部屋に向かうことになった。
部屋に入るなり、心音はマックスマーラのコートを脱ぎ、肩をこきこき回しながら
「疲れたわ。瑠華、お風呂にお湯溜めて~」とあたしの両肩に手を乗せてさっそくの我儘っぷり。
ため息を吐きながらも何故か心音の我儘に「No」と言えないあたしは大人しくバスルームに向かって湯を張った。正直あたしも疲れていた。足をのばしてゆっくりしたい。
コートを脱いだ心音のコートの中はレース素材が洒落たトップスと革素材の膝丈タイトスカート。
「ユーリとは楽しめた?」とダイヤの少しゴージャスなピアスを外しながら心音が聞いてきた。
「まぁね。あの男さえいなければもっと楽しめたのに」と恨みがましく心音を睨むと、心音は苦笑を浮かべ「だって四歳の子が一人で来れるわけないでしょ?それこそマックスが許さないわよ」
まぁそうだけど。
「ティム一人でも良かった」と悔し紛れに言ってやると、「ダメよ、ティムはマックスのボディーガードだもの」と心音はまたも口答え。それでも苦笑をすると
「まぁその様子からするとマックスとまたひと悶着あったみたいね。ね、久しぶりに一緒にお風呂入らない?そこで聞くわ」と心音はあたしを宥めるように似非い笑顔でにこにこ。
今すぐ!言いたい事はたくさんあるわよ!