Fahrenheit -華氏- Ⅲ

「どういうこと!?二村くんが部長を脅したの!?何で!」と緑川が演技を続けて驚きの表情を浮かべ


「ち、違うんだ……!これは言葉のあやって言うか」


「言葉のあやぁ?お前しっかり認めたじゃねぇか」


俺が二村に詰め寄ると二村は一歩後退した。


「認めろよ。これを俺に送り付けて脅したって」


声を一層低めて語気を強めると二村はたじろいだように、また一歩後退した。


「幸いにもまだ被害届は出していないが、正式に被害届を出してコンビニの防犯カメラを調べて貰えれば判明するよな」


「それは無理ですよ。だってあのとき黒いキャップとマスクをしてたし俺だとは……」


とまたも面白い程墓穴を掘ってくれた二村。


「二村くん……」緑川が不審顔を浮かべて二村を見上げる。


二村がまたもハっとなって口を覆ったが時すでに遅し、って感じだな。


「え…何?二村くんが部長を脅したって…?何で?」と給湯室からもひそひそと女子社員の声が聞こえてきた。


二村、もうお前に逃げ場なんてないんだよ。


「二村くん、酷いよ!何んでそんなことしたの!あたし疑われたんだよ!」と緑川が喚きながら泣き出す。


演技できるかなって心配してたくせに、女優になれるぐらいうまいじゃねぇか。


俺は盛大にため息を吐き


「ここで認めりゃ、被害届は出さねぇよ」と最後の情けを掛けて言ってやると二村は下唇を噛みながらも、ぎこちなく頭を下げた。


「……すみません、ほんのイタズラ心で」





「イタズラ心?ふざけんじゃねぇ!!こっちはどれだけ迷惑被ったか!下手すりゃムショ行きだったんだぜ!」





俺が怒鳴ると


二村は顔を青白くさせて一層深く腰を曲げた。


「も、申し訳ございませんでした。今後一切このようなことは……」


「当たり前だろが!今度こういうことをしてみろ?二倍…いや十倍にして返してやるからな」


ドン!俺はファックス用紙を二村の胸に押し付けると踵を返した。


 
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