Fahrenheit -華氏- Ⅲ

今頃盛大に緑川と二村は喧嘩してるかな?いや、緑川を絶対手放せない二村に緑川を怒ることなんてないし、ましてやその資格なんてない。


これでしばらく二村からの嫌がらせは止まるだろうが、いつまで続くかどうかは分からない。


「うまく行きました?」


佐々木が経理部に行っていて空席になっているのを確認して瑠華がこそっと聞いてきた。


「うん、柏木さんが提案してくれたアイデア、想像以上の効果。マジでありがとな」


「いいえ、このまま泣き寝入りなんて私は絶対できないタイプなので」


はは……そうですよね~


こっわー、俺も迂闊に瑠華を怒らせることできねぇや。


まぁ十分怒らせてきた……って言うか泣かせてきたんだけどね。


瑠華を泣かせない方法―――それがあるんだったら誰か教えてくれよ。


それから緑川は目元をハンカチで押さえながら、そしてその後に続いて二村が緑川の肩を撫でながらフロアに入ってきた。


「ど……どうしたの…?緑川さん」と内藤チーフの抑揚を欠いた、しかし驚く声が聞こえてきた。


緑川は何て答えたのだろう。ここからじゃ聞こえない。


二村は今頃焦っている筈。何せ緑川の不信感を払拭させなければならないからな。


まだ瑞野さんに気があると思っていると気付かれたら全ての計画はパぁだ。


「これでしばらくは二村さんは緑川さんの機嫌取りに必死になる筈でしょうからね。部長にこれ以上下手なことはできない筈」と瑠華が小さな声で淡々と答え、これまた書類を淡々と整えている。


そうだといいがな。


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