Fahrenheit -華氏- Ⅲ
「何だよ、気色悪い声出しやがって」思い切りドン引きしていると
大抵裕二がこうやって来る時はろくでもない頼み事されるんだよな。
「飯まだだろ?俺もまだだから一緒にランチでも行こうぜ」と。
ろくでもない頼み事、80%。
「は?何でお前と」
「ちょっと相談に乗って欲しいことがあってさぁ」と裕二は困った顔を浮かべて顔の前で拝む仕草。
困ったことぉ?
90%に上がった。
何かよく分からないが、話を聞いてみないと分からないしな。
「分かったよ、んじゃ俺飯行ってくるから」と三人に言うと
「かしこまりました」
「「分かりました」」と三人から返事が来た。
下に行くためエレベーターを待っているとき
「どこへ行く?」と裕二に聞かれ
「どこでもいいよ」どーせ大した話じゃねーだろ。
「どこかさ、会社の人間の知らない店に行きたいんだけど」
「何?そんな深刻な話なん?」俺が目を細めると、裕二はぶんぶん首を縦に振った。
仕方なしに、俺は前に村木と言った定食屋に行くことにした。あそこ会社の人間は来ないし、リーズナブルな上結構うまかったからな。
定食屋まで歩いて十分。裕二はその間も”相談事”というものを持ち出さなかった。ただ俯いて俺に連れて行かれるまま。
相当落ち込んでるな。ホントに―――何があったんだろう。
とちょっと気になったが、ま、定食屋に着いたら喋るだろ、と簡単に考えていた。
定食屋は相変わらずの賑わいを見せていたが、こないだより少しだけ時間がずれていたのかこの前より少し客が少なく見えた。
今日の日替わり定食はチキンカツのみぞれ煮だったからそれにした。裕二も同じものに決めてお冷を飲みながらようやく切り出した。