Fahrenheit -華氏- Ⅲ
裕二の話に寄ると綾子はちゃんと裕二にクリスマスプレゼントを用意していて、貰った瞬間自分が何も用意してなかったことに頭を抱えたみたいだった。
「てかクリスマスプレゼントがなかったぐらいであいつが怒るタイプかぁ?」
「俺もそう思ったから最初は軽く流してたけど、それが悪かったんだよなー、付き合って最初のクリスマスなのに!って怒り出してさ」
まぁ。あいつも女だったってワケか。瑠華は―――あんまり気にしなさそうだけど。
「軽く流すのは良くなかったかもな。謝り倒せば良かったのに」
明後日の方を見ながらこめかみを掻いていると
「だからさ、リベンジっての?カウントダウンに綾子にすっげぇプレゼントして機嫌直してもらおうって」
「そんなに簡単にいくもんなの?」
「いく、てかいかせる。だからさ、お前もカウントダウン付き合ってくれね?桐島ファミリーも呼んでちょっとしたパーティーみたいにさ」
カウントダウン??
「やだよ、俺らお邪魔虫じゃん」
「そう言うなよ。俺を助けると思って」
「何の義理があって」ふん、鼻息を吐くと
「オークション」
ボソッ
裕二が囁いた。
俺は思わず裕二に向き合った。
「俺の助けがあったから、うまく阻止できたろ?」
「だけどあれは………」
ダメだ……裕二とは言え、まだことの真相を話すわけにはいかない。何より俺があのオークションの裏に隠された本当の意味を掴みかねている。
瑠華は何故あんな回りくどいことまでして、オークションを無理やり実行したのか。そしてあの稟議書。あれは間違いなく”正式”なものだった。ヴァイオリンの偽オークションじゃなく桂林のリゾート開発のオークションに違いなかったのだ。
分からないことが多すぎて頭がパンクしそうだってのに。
しかも俺は昨日綾子と喧嘩をする裕二より濃い夜を過ごしたって言うのに。
こっちの気も知らないで。
「いい大人なんだからお前一人で何とかしろ」
オークションの件を握られているとは言え、俺がそこまでする義理はない。ついつい突き放すような言い方をしたが
「お前だって一人カウントダウンなんて寂しいだろ?去年までは俺ら同期四人で集まってカウントダウンしてたじゃねぇか」
ま、まぁそうだったな。
「でも状況が違う。お前と綾子はくっついたし、桐島は結婚した。俺は―――」
「柏木さんと別れてるんだろ?だったら尚更一人で寂しいじゃん」
う゛!痛い所を突くな。
確かに一人で年末年始を迎えるのは寂しい気がするが……