Fahrenheit -華氏- Ⅲ


瑠華と一緒に出掛けたい。


でも二村の目が気になる。でも裕二も一緒だったら言い訳できる。


俺の頭の中でその二つの考えが行ったり来たり、せめぎ合いだ。もういっそのこと一方通行にしてくれ、とさえ願ったぐらい。


分岐点が多すぎて判断が鈍る。


「柏木さんだって綾子が悲しむ姿を見たくない筈」


この一言が決め手になったのかな。俺の分岐点は傾いた。


「……分かった。一応聞いてみるけど断られたら諦めろよ」


「サンキュ!啓人!持つべきものは親友!」


こうゆうときだけ”親友”かよ。


まぁこいつには借りがあるしな。


何より、何かと理由をつけて瑠華と一緒に居たい。


その後俺たちは他愛のない話をして定食を平らげると、社に戻ることにした。ランチ代は裕二が奢ってくれた。


「いいのが見つかったら夜も奢る」


「あーはいはい」


生返事を返して社に戻り、だけどどうやって瑠華に言いだそう、と俺は悩んだ。


考え抜いた後、俺は帰ってしばらく普通に仕事を進めていたが二村が外回りに出かける雰囲気を察したとき、瑠華に


「柏木さん、ちょっと資料探し手伝って欲しいんだけど。ちょっと難しい案件でさ」と


ちょっと苦しい言い訳かな、と思いつつ顔が引きつるのを何とか抑え瑠華に言い出すと


「難しい案件?」と瑠華は一瞬だけ首を傾げたものの「かしこまりました」とすぐに席を立った。


ヤッタ!


ひとまずのミッションはクリアだ。


一緒に資料室に向かい、俺は瑠華を最奥の棚へと手招きした。


「この辺に資料があるのですか?」と瑠華が腰を落としながら「難しい案件なら……」と分厚いファイルが並ぶ棚を手で撫でながら


「いや、あれ嘘、って言うか言い訳?」


と俺が言うと


「は?」と瑠華が顔を歪めた。


はい!ごめんなさい!!


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