Fahrenheit -華氏- Ⅲ

一階ロビーに向かうとすでに帰り姿の裕二と瑠華が待っていた。


従業員入り口のゲートに慌てて社員パスをタッチさせゲートをくぐると


「おっせーよ」と裕二が一言。


「お・前・の!為に俺らが付き合ってやるっていうのにその態度は何だよ」


二村とやりあった直後だからな、苛々を思わず裕二にぶつけちまう。


「わ、わり…」と裕二はお手上げのポーズ。


「大方二村さんとまた言い合いをした口でしょう。麻野さんに当たるのは間違いですよ」と瑠華に注意され


「……はい」と今度は俺の方がしゅんとなった。


瑠華が言った言葉はもっともだ。俺、裕二に当たっちまった。


せっかく瑠華と出かけられるっていうのに……


「ま、まぁ悪りぃのは俺だからサ、それにこいついつも俺にこんな感じだし」と裕二は瑠華にあたふたと説明。


裕二、フォローになってないんですけど。


そこから俺たちは東京メトロ日比谷線で約15分程で銀座に向かった。


銀座だったら何かいい店あるだろう、と短絡的な思考だったが、銀座三越や、松屋銀座、和光本店のほか、大型商業施設のGINZA SIXと百貨店が並んでいてどこを選べばいいのやら。


とりあえず一番有名な銀座三越に入ることにした俺たち。


「ねぇねぇ柏木さん、女の人って何貰ったら嬉しいものなの?」と店内を周りながら裕二が瑠華に聞いた。俺と裕二に挟まれた瑠華は裕二の方に顔を上げ


「その時々に寄りますが、それより予算はおいくらぐらいをお考えで?」と瑠華に逆に聞かれ


「う゛~ん、10万ぐらいまで」


「10万!?綾子にぃ?」


まぁ?俺は?瑠華に一本15万以上するリングをもらったがな。


「部長、そして麻野さん値段の問題ではありません。女性は好きな男性からいただいたものなら例え500円のものでも嬉しいものです」と瑠華は言うけど、瑠華が身に着けているのをみると説得力ねー。


「バッグや靴は好みとかサイズとかありますしね」


「柏木さん、綾子のバッグの趣味とか知らない?」


「それは麻野さんの方がよくご存知か、と」


「だってあいつ出張とか何だかんだであんま会えないし、そもそもあいつが何を好んで身に着けてるかなんて普段あんまり見ないんだよ。会ったらついつい顔を見ちゃって。あいつの笑う顔が俺すっげぇ好きでさ」


「分かる!」


俺も、俺も隣で瑠華が笑ってくれただけで一日中幸せでいられる。


俺が裕二を指をさすと、隣でブリザード並みの冷たい風が吹いてきた気が……


「好きな女性の好みを知るのも大事なことだと思いますが?」


瑠華……何か怒ってない??


もしかして…瑠華も俺に対して自分の好きなものを研究して欲しかったとかとか??

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