Fahrenheit -華氏- Ⅲ


でもでも、俺は瑠華が好きなものをいっぱい知ってる(つもり)


酒なら一番好きなのは赤ワイン。肉も魚も野菜も好きで食べることが大好き……


って……食のことしか知らねーじゃん。


あ、でも古い映画とか好きなことも知ってるもんね~


裕二に勝ったつもりであれこれ考えていると


「やはり無難にアクセサリーが良いのでは」


と、一つの店舗の前で足を止めた瑠華。それはダイヤモンドや結婚指輪とか有名なCMが流れている高級店舗だった。


「高そうだなー、予算に収まるかな。ネックレスは……俺が貰ったから捻りがないし、やっぱあげるとしたら指輪がいいよなー」と裕二が顎に手を置く。「そしたらやっぱペアリングにしたくなるしなー」


ペアリング……


俺は瑠華から貰ったリングが下がっている辺りを無意識に抑えた。


ちらりと瑠華を見ると瑠華の首にはいつものシルバーのチェーンが掛かってなかった。この所うまく行っている気がしたが、それはやはり俺の独りよがりだったか……瑠華はショーウィンドウに並んでいるジュエリーたちを眺めていて


はい!無視!


もう慣れてるけどね、瑠華のマイペースっぷりは……


そのうちにコの字に並んだガラスのショーケースの内側で店員が瑠華に声を掛けていた。


「何かお探しですか?」


「ええ、まぁ友人へのプレゼントを選んでまして」と瑠華が顔を上げる。


「リングをお探しですか?」との問いかけに


「そうですね……で、どうします麻野さん」と瑠華が裕二の方を振り返った。


「え?ああ、そうネ」と裕二が慌てて瑠華の方へ歩み寄った。


瑠華が見ていたのはプラチナ素材で真ん中に小さなダイヤがあしらってある。少しシンプル目なデザインだったが、これなら場所を問わずつけていけられる筈。


「お、いいじゃん」俺も言って値段を見ると15万円となっていた。これをペアにすると30万オーバーだ。


いきなり予算オーバーじゃんかよ。


でもプライド上『高い』となかなか言い出させなさそうだ。


「できればペアリングにしたいんですよね~、でも予算をもうちょっと押さえたいかな、って」


他人のことなら何とでも言える。俺が代わりに言ってやると


「こちらはプラチナ素材ですが、もう少し予算を抑えるとしたらシルバー素材のものもありますよ。こちらは土台がシルバーですがデザインは同じで、男性用はダイヤがないのですが二本で12万円と言うところです」


と言われ


「2万オーバーかぁ…」と裕二は悩んでいたようだが、


もう二万ぐらいいいじゃねぇか、と俺はあくまで他人事。


「ダイヤは綾子さんの誕生石でもあるし、いいんじゃないですか」と瑠華。


何で瑠華が綾子の誕生日を知ってんだよ。と今度は綾子にまで嫉妬。


てかあいつ誕生日いつなの?


「4月の16日ですよ」と瑠華が先回りして言ってくれた。


そーだったんだぁ。


やっぱ瑠華を連れてきて正解だったかも。

< 925 / 929 >

この作品をシェア

pagetop