Fahrenheit -華氏- Ⅲ

「このシリーズでしたらダイヤ以外他にもたくさんの石を揃えていますよ。お友達の好きな石を選んでもよろしいかと」


とにこにこ笑顔の店員。


「綾子の誕生石……しかもダイヤって女の子の憧れだよね?」


裕二がまたも瑠華に聞いている。瑠華の指には今日は何もはまっていない。そう言えば俺瑠華が指輪をはめているとこあんま見ないな。


ピアスやネックレスは高そうなのしてるけど。


バングルやブレスレットの類もあまり見たことがない。


「仕事の邪魔になるので。PCが打ちにくいでしょう?」と言われ、ああ、なるほど。と納得。


でも以前は―――マックスと結婚してたときはそれは高いだろう指輪が彼女の左手薬指を豪華に飾っていたに違いない。


それは瑠華の華奢の左手薬指を咲き誇る大輪の華。


そんな暗い考えを浮かべていると


「お友達の方、サイズはいくつで?どの指にはめられるんですか?」


とここでまた店員の突っ込みが入り、今度ばかりは俺たち三人顔を合わせた。


「ペアリングって言ったらやっぱ左手薬指だよな」


「でもサイズ知ってんのかよお前」


「分かんねぇ」


嗚呼、とことん使えないな俺たち。


俺たちの会話を聞いていた瑠華が「恐らく6号か7号かと」と言い


「当店の指輪は少し小さめサイズで作ってあるので6号7号ですと少し大きいかもしれませんね。お客様は何号で?」と店員が瑠華に聞いて


「確か5.5号だった気が」


「一度試してみませんか?」と店員は試し用のリングがじゃらじゃらくっついた輪っかみたいなのを取り出し、瑠華は俺たちを振り返った。


「試してみて。どれぐらいの差があるのか」と俺は聞いた。


「では」と言って瑠華は左手薬指を差し出す。


「5.5号は……やはり少し大きいですね。抜けてしまうかもしれません。5号はぴったりですが、一生外さないのなら4.5号でもいけますね」


そんなに小さいのか瑠華の指輪は。まぁ華奢な指はしているのは見て分かるが、とガン見していると


「おい、お前将来柏木さんの指輪ここで買おうって考えてるんじぇねぇだろうな」とボソっと裕二が俺に耳打ち。


「へ!?ま、まさか!そんな先のこと…!」


考えてました。


「二万予算オーバーだが、決めるって決めたからな」


裕二は腕を組んで決意を固めた様。それでこそ男だ。


「これにします。一応、サイズは6号で」


「ありがとうございます。ペアリングとおっしゃいましたよね。お客様のサイズも図らせていただいても?」と店員は裕二に目を向け


「あ、はい」と慌てて左手を差し出している。


その時だった。


「ねぇどこへ行くの二村くん」と聞き慣れた声が聞こえてきて俺たちがそちらに目を向けると


んげぇ!


何で二村と緑川が!?


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