Fahrenheit -華氏- Ⅲ
18時も30分過ぎて、
「佐々木、早く日報上げろ。今日は俺も予定がある」
必要以上にそっけなく言うと
「あ、はい!すみません」と佐々木は慌てる。
俺は思わず苦笑い。自分の機嫌で佐々木に当たるなんて、最低だ俺。
「わり、言い方キツかったな。振り回して悪い」
素直に謝ると
「いえ!僕も…柏木さんに貸すDVD探さなきゃ、なので」
「DVD?何の?」
朝話してた話題のことをさりげなく聞いてみる。佐々木はあっさりと
「北斗の拳です」と答えた。
「は?」
「ですから“北斗の拳”です」
北斗の拳―――あの『お前はもう死んでいる』ってヤツ??
まぁ俺も結構好きだったけど。
何で瑠華が“北斗の拳”!?激しく不釣合いだぜ!
あの可愛い顔で、あんなごっついキャラクターがいっぱいでバイオレンスな漫画を読んじゃうの!?
「昨日バッタリ本屋さんで会ったんですよ~柏木さん、漫画を買おうかどうか悩んでて、面白いですよって言ったらハマってくれたみたいで」
「まぁ面白いよな。俺も結構好きだった」
……
て、呑気に思ってる場合じゃない!瑠華と佐々木がバッタリ外で!?
それって、それって何か少女漫画にありそうな展開じゃない!?
「柏木さん“愛を取り戻せ”の曲が気に入ったみたいで、ダウンロードもしてましたよ」
そんなに!?
瑠華のハマりポイントが分からない!あんなに近くに居たってのに…
「僕、サウザーが結構好きであの名台詞『愛ゆえに…』って痺れます」
愛―――ゆえに
そう―――だな。俺も好き。
愛する人を守るため、俺は敢えて彼女の手を離した。
けれどもう一度この手で握り返したい。
いや、握り返す。
その前に
邪魔するヤツは消えてもらう
二村―――