Fahrenheit -華氏- Ⅲ


約束の19時間際、いそいそと帰り支度をしていると


「あっれ~、部長お一人ですかぁ??」


出たな、二村。


「今日はNo残業デーだからな。俺も帰る。お前んとこは大変だな」皮肉ると


「そ~なんですよぉ、村木部長にコキ使われて」と二村がひそっと言いながらすり寄ってくる。


「本人に言え」そっけなく言い、俺はPCの電源を落とした。





「それとも、“カノジョのパパ”に言った方が早いんじゃないか?」




俺が口の端を吊り上げニヤリと不敵に笑ってみせると、二村は少したじろいだ様に一歩後退した。


何か……勝った??


怯んだままの二村の横を素通りして、ヤツの肩を軽くポンポンと叩き


「じゃな、俺、新しいオンナとデートの約束してっから。お前もせいぜい恋愛“ごっこ”楽しめ?」


たっぷりと嫌味を込めて言ってやると、二村は唇を噛みながら俺を睨んできた。


「そう言えば、柏木さん、妙にめかしこんでたな、アッチも新しいオトコ見つけたんじゃねぇの?」


瑠華はその相手のことを『ジョーカー』と言った。そいつが何者か分からない。


マックスかもしれないが。


これは俺の完全なる挑発と、攻撃だ。


俺が瑠華と別れてそれ程落ち込んでいない、と言う態度が気に食わないのか、そうやすやすとお前の思う通りにはいかねぇんだよ。


地下エントランスホールの駐車場に躍り出てきょろきょろと辺りに視線を配っていると、エントランスホールの太いコンクリートの柱から


「おっせぇよ。誘ったお前が一番後ってどうゆうつもりだよ」と裕二が腕を組み目を細めながら出てきて、その後ろに綾子と桐島も居る。


「わり、ちょっとトラブルって言うか…威嚇?」


「威嚇?」綾子が奇異なものを見るような目つきで俺を見てきて


「まぁ、後で説明するワ。俺、セカンドカーで来てるから全員乗れる」キーをふらふらさせると


「用意がいいな」と裕二は探るような苦笑い。


「でも啓人の車、外の駐車場でしょ?歩くの寒い」と言いながら桐島は黒いトレンチコートの襟を立て前をきゅっと合わせる。「車持ってきて」と我儘?


「ちょっとの距離だろ!歩けっ!」


「何よ!誘ってきたのはあんたの方でしょ!桐島くんが寒くて風邪ひいたらどうするのよ!」


「おい、綾子!桐島より俺の方を心配しろよ!」と裕二。


カオス……


三人に協力を願いたかったが、俺人選ミスッた??


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