Fahrenheit -華氏- Ⅲ

買ってきた惣菜やつまみや酒をリビングのローテーブルに置くとちょっとした居酒屋みたいになった。


「「「「お疲れさ~ん」」」」


と、とりあえずみんな「駆けつけ一杯」と言った感じでビールで乾杯。


綾子は豪快に一気飲みして、空になった缶をテーブルに置き


「はぁ!仕事終わりの酒ほど美味しいものはないわ~!」と笑う。「あ、タバコ吸っていい?」


お前……ホントに女か?


まぁ俺もタバコ吸いたかったから良いっちゃいいけど…


缶ビールの半分程を飲むまで、普段通りの四人だったが、俺は早々に切り出した。


「実は……話したい事って言うか相談したいことがあって…」と言うと


三人が俺の方を向いた。


俺は俯いたまま




「瑠華と別れた」




と小さく報告。


三人とも何も言わなかった。


あのぅ……もっと驚いたりしないワケ?


「そうかな~って思ってたわ」


「俺も。啓人が落ち込むのって大抵女絡みだし」と裕二。


「俺、気付かなかったケド、招集掛けられたし。それで何となく?」


桐島……お前気付かなったワリには冷静だな。てか招集って…


「まぁま、今日は啓人の失恋会ってことで~」


と綾子が強引にビールの缶を掲げ


「ちょっと待て。それって俺がフられた前提?」


「は?、違うの?」と綾子が訝しげに目を細める。


「お前の愛情ウザいからな、いつフラれるか心配してたかが、案外早かったなーって思ってたけど」


「俺、全然知らない」と桐島。


「違う…」俺はビールの缶をぎゅっと握った。ベコっと言う金属が潰れる音が聞こえた。中から残ったビールの液体が飛び出てきて、俺の手を濡らしたがそれすら気付かず





「俺がフった」




< 98 / 608 >

この作品をシェア

pagetop