真昼の星空
陽は図書室の隅の席で、課題の資料を広げていた。

静かな空間に、ページをめくる音だけが小さく響く。

蛍光灯の白い光。
積み上がった本。
書きかけのノート。

「……ほんと、勉強大変……」

誰にも聞こえない声でつぶやき、肩を回す。

ふと、手を止めた。

明日から冬休みだった。

その事実が、遅れて胸に落ちてくる。

そういえばあれから一度もまさとくんに会えていない。

会えたら、きっと壊れそうなくらいうれしい。
でも、会ったら会ったで平静ではいられない。

だから、会えなくてもよかった。
そう思っていたはずなのに。

一か月近く、学校は休みになる。

陽はペンを置き、机に伏せるように額をつけた。

――長かった夏休み、つらかったな。

姿を見かけないだけで、あんなに落ち着かなかった。
また同じ時間が始まるのだと思うと、胸がきゅっと縮む。

今日、無理にでも探して会えばよかった。

キャンパスのどこかにいたかもしれない。
駅へ向かう道ですれ違えたかもしれない。

そんなことばかり考えてしまう。

きっと、私のことなんて忘れてるだろうな。

陽は荷物をまとめ、図書室を出た。

外はもう夕方だった。

空はオレンジから夜空の色に染まりはじめ、冬の冷たい風が頬を撫でる。

人気の少ない中庭で立ち止まり、陽はそっと空を見上げた。

星はまだ見えない。

それでも、いつものように小さく願う。

「まさとくんが、私のこと覚えててくれますように」

吐いた息が白くほどけて、夕暮れの空に消えていった。
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