真昼の星空
入ってきた女性は、雅人に気付くより先にマスターに声をかけた。

「マスターどうも」

マスター
「いらっしゃいませ」

「あ、まさくんお待たせしました」

旬と希の時間が止まる。

――まさくん?

雅人も驚く。

「ようちゃん、マスター知ってるの?」

「うん。ここ出来た頃から週一で来てるよ」

逆に聞き返す。

「まさくんも知ってるの?」

「うん。ワイン取引してもらってる。2年前から」

「え?!そうなの?」

雅人は驚きすぎて紹介を忘れていた。

「雅人さん」

旬に呼ばれて我に返る。

希は両手で口を押さえていた。

「あ、失礼致しました。ようちゃん、ここのオーナーの佐伯旬さんと、奥様の希さん」

「オーナーさんですか??はじめまして。森谷陽です」

顔を上げた瞬間。

希と目が合う。

「あれ……なんで……?Minoの希さん……ですよね…ってゆうことはオーナーさんて、青山不動産の???」

旬と雅人は嬉しそうに2人を見る。

「陽さん、はじめまして。いつもありがとうございます。今日もコートとバッグ!」

陽は照れながらコートを脱いだ。

「パンツもです……嬉しくて泣きそう。Mino大好きなんです」

「雅人さんから伺いました」

陽が振り向く。

「なんでまさくん知ってるの?」

「ようちゃんの持ち物ほとんどMinoだったから」

旬と希は目配せする。

(下着の話はしないんだ)

旬が立ち上がる。

「マスター、奥の部屋使うね」

「かしこまりました」

奥?

全員が思った。

鍵を開け、廊下を進むと個室があった。

希が目を輝かせる。

「素敵!ここも旬が?こんな隠し部屋?!」

旬は得意げに笑う。

「お気に召しましたか?」

「ここはね、こういう時の為に作ったの」

「こういう時?」

「大切な人と話す時」

雅人は少し恐縮する。

「すいません、なんか、僕ら……」

旬は首を振った。

「雅人さんの話、もっと聞きたいと思ったので」

希も頷く。

「私も!」

陽だけがまだ状況を掴めていない。

希が言った。

「まさくん、ようちゃん呼びにキュンとしました!」

陽は少し恥ずかしそうに笑った。

「20歳で付き合い初めてその時からそうよんでるので……2人とも35歳なのに」

「そんなに前からなんですね」

希は無邪気だった。

旬だけが少し複雑だった、


「10年間離れてたって伺いましたが、その間って……何も無かったんですか?」

雅人
「ありませんよ」


「ありますよ」

同時だった。

2人は笑った。

でも旬と希は笑えなかった。

旬が静かに聞く。

「陽さん。待とうとは思わなかったんですか?」

陽は少し考えた。

「待たないようにしてました」

静かに言う。

「嫌いで別れた訳じゃないので。待ってて来ないのが一番きついと思って」

少し笑う。

「だからチャンスがあれば恋してみようって」

「お付き合いは?」

「何人かとしました。でも、振られることが多いです。」

希は思わず言った。

「こんなに綺麗なのに……」

陽は首を振る。

「きっと何か足りなくて。私の事100%で見てくれなくなるんです」
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