気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
柊弥さんが花火の先へ火を近付ける。
しゅっ、と小さな音がして、
次の瞬間。
ぱちぱちぱちっ。
「おぉー!」
茉尋が思わず声を上げる。
「きれい」
私も自然と笑顔になった。
「はい、次」
柊弥さんから花火を受け取る。
火を近付けると、じりじりと火薬が燃え始めて、手元に小さな光が咲いた。
昼間の太陽とは全然違う。
優しく揺れる夏の光。
「なんか久しぶり」
「花火なんて何年ぶりだろ」
「高校以来じゃない?」
「そんなに?」
話しながら花火を揺らす。
その横では、
「うわっ!」
希遥さんが思わず後ろへ飛びのいた。
「熱っ!」
「近付けすぎ」
想くんが冷静に言う。
「だって急に来た!」
「花火だからな」
「想は冷たーい」
「普通」
また始まった。
そのやり取りがおかしくて、みんな笑う。
「茉尋くん!」
希遥さんが新しい花火を差し出す。
「これ長いやつ!」
「ありがとうございます」
「いっぱい楽しんで!」
「希遥さんが1番楽しそうですけど」
「バレた?」
「バレてます」
希遥さんは子どもみたいに笑った。
茉尋も笑っている。
最初に会った日の緊張した表情は、もうどこにもなかった。
気付けば、この輪の中にいるのが当たり前みたいになっている。
私はそんな様子を眺めながら、小さく息を吐いた。
たった数日。
それでも、一緒にご飯を食べて、一緒に笑って、一緒に出掛けて。
そんな時間が、人との距離を少しずつ縮めていくんだ。
手元では、小さな火花が静かに揺れている。