気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「みかんとかどう?」
「秋だから梨もありじゃない?」
「梨飴?」
奈瑠の意見に侑雅くんが吹き出す。
「聞いたことないな」
「でも美味しそうじゃない?」
「食べ辛そうだけど」
そんな他愛もない会話が続く。
高校までの文化祭は、先生がほとんど準備を進めてくれていた。
でも大学は違う。
何を売るのか。
どこで材料を買うのか。
値段はいくらにするのか。
全部、自分たちで決めていく。
大変だけど、その分わくわくする。
「そういえば」
侑雅くんが私を見る。
「茉桜って、柊弥先輩とよく一緒にいるよな」
「え?」
突然名前が出て驚く。
「法学部の有名人」
「この前も食堂で見た」
「あぁ、シェアハウス一緒なんだっけ?」
奈瑠が思い出したように頷く。
「そうそう」
「いいなぁ、法学部のイケメン先輩と同居とか」
「違う違う」
私は慌てて首を振る。
「そういうんじゃないから」
3人が顔を見合わせて笑う。
「焦るところが怪しいんだけど」
「怪しくないって!」
賑やかな笑い声が、秋のキャンパスに広がっていった。