気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「ただいまー」
「おかえり」
リビングへ入ると、希遥さんがソファから顔を上げる。
「茉桜ちゃんが最後に帰ってくるなんて珍しくない?」
「学祭の準備に夢中になってたら、こんな時間になっちゃいました」
「もうそんな時期かぁ」
「希遥さんも遅かったの?」
「うん。作品が全然終わらなくて」
大きく伸びをする希遥さん。
机の上にはスケッチブックや色見本が広がっていた。
「茉桜は何やるの?」
「教育の友達とフルーツ飴を売ります!」
「いいなぁ!」
希遥さんが目を輝かせる。
「フルーツ飴って学祭って感じする!」
「そう?」
「私は作品制作だからさぁ。毎日アトリエと大学の往復で、あんまり『学祭!』って感じがしないんだよね」
「確かに、美術系は展示がメインですもんね」
「そうなの。青春してる感が足りない!」
「十分楽しそうですけどね」
「いやいや、茉桜ちゃんみたいに『いらっしゃいませー!』とかやりたい!」
その時だった。
「希遥」
キッチンから柊弥さんが顔を出す。
「毎年同じこと言ってるよね」
「だって憧れるんだもん」
「去年も一昨年も聞いた」
「言わないで!」
思わず笑ってしまう。
学部は違っても、みんなそれぞれ違う形で学園祭を迎える。
同じ大学なのに、過ごし方はこんなにも違うんだな、と改めて思った。