気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「それじゃ、俺はこれデータにまとめとくわ」
逸晟くんがノートパソコンを閉じながら言う。
「じゃあ俺は紙面から大体の予算出しとく」
想くんも資料をまとめながら答えた。
「会場って7階の一番広い講義室で合ってるよな?」
「うん、合ってる」
どうやら打ち合わせも一段落したみたいだ。
「そういえば、建築って学祭で何やるんですか?」
私が聞くと、逸晟くんが待ってましたと言わんばかりに振り返る。
「巨大迷路!」
「え、楽しそう!」
「毎年恒例なんだよ。今年は昔から使ってる段ボール迷路をリニューアルする予定」
「へぇ〜!」
「想なんて設計図見ながら『ここ通路狭い』とか、『ここの角は危ない』とか、ずっとチェックしてるし」
「当たり前だろ」
「そういうとこなんだよなぁ」
逸晟くんは苦笑しながら肩をすくめた。
「迷路なんて作れればいいって思うじゃん? でも想は、人が歩きやすいかとか、安全かとか、そういうところまで気にするんだよ」
「それが普通」
「普通じゃないって」
私は思わず想くんを見る。
本人は”当たり前”みたいな顔をしている。
でも、その当たり前をちゃんとできるところが、想くんらしい。
誰かに言われたからじゃない。
自分が納得できるものを作りたい。
そんな真面目さが、建物だけじゃなく、普段の生活にも表れている気がした。