気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
ある日。
「奈瑠〜、この赤もう少し濃い方がいいかな?」
「うーん……あ、ごめん」
奈瑠のスマホが震えた。
画面を見た奈瑠が「あちゃー」と顔をしかめる。
「教授だ」
「え?」
「課題のことで呼ばれた」
「今から?」
「5分だけって」
奈瑠は申し訳なさそうに笑う。
「ごめん!ちょっと行ってくる!」
「うん、大丈夫!」
「片付けはしなくていいから!」
そう言い残し、奈瑠は小走りで教室を出ていった。
静かになった学祭の共用倉庫。
私は完成した看板を見つめる。
大きく描かれた
『おいしい!かわいい♡フルーツあめ』
の文字。
みんなで何日も考えたデザイン。
思っていたより可愛く仕上がった。
「よし」
下書きも終わったし、今日はここまで。
乾かすために倉庫の隅へ移動させようと、看板を持ち上げる。
思ったより軽い。
……けど、大きい。
「っと」
バランスが取りづらい。
前が見えない。
一歩踏み出した瞬間。
足元の椅子に軽く当たった。
「あっ……!」
体がぐらっと傾く。
看板ごと倒れそうになった、その瞬間。
「危な」
誰かの腕が、とっさに私の肩を支えた。
「……え」
ゆっくり顔を上げる。
「…想くん!」
「何やってんだ」
看板を押さえながら、呆れたようにため息をつく。