気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「1人で運べるかなぁと思って」
「思うな」
「あはは…ごめん」
「そそっかしい」
その一言が少し悔しくて口を尖らせる。
「ちゃんと持ててたもん」
「最後持ててなかっただろ」
「それは…そうだけど…」
反論できない。
想くんは看板を一度自分の方へ寄せると、
「貸せ」
と言った。
「え?」
「運ぶ」
「でも」
「いいから。また倒れたら危ないだろ」
私が返事をする前に、想くんは大きな看板をひょいと持ち上げる。
さっきまであんなに苦戦していたのが嘘みたいだった。
「どこ置く」
「あ、あっち」
私は慌てて前を歩く。
後ろから聞こえる足音は一定で、看板が揺れることもない。
やっぱり。
こういうところ、本当に頼りになるなと思った。
私の歩幅に合わせるように、想くんは後ろをゆっくり歩いてくる。
その姿がなんだか少しくすぐったくて、私は前を向いたまま、小さく笑った。