気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
放っておけない[So side]
学園祭まで、あと2週間。
キャンパスはいつもより騒がしかった。
廊下には各学部の看板が並び、ラウンジには段ボールや木材が積まれている。
普段は静かな共用倉庫も、今だけは資材や作品で埋め尽くされていた。
「想、それ倉庫にあるらしい」
逸晟が設計図から顔を上げる。
「予備の養生テープ」
「……分かった」
資料を机に置き、共用倉庫へ向かう。
迷路の組み立ては始まったばかりだ。
資材が足りなくなるのは、毎年のことだった。
倉庫の扉を開ける。
すると、中から聞き覚えのある声がした。
「奈瑠〜、この赤もう少し濃い方がいいかな?」
「うーん……あ、ごめん」
……茉桜か。
教育学部もこの倉庫を使っていたらしい。
目的の棚へ向かおうとした時、スマホの着信音が聞こえた。
「教授だ」
「え?」
「課題のことで呼ばれた」
「今から?」
「5分だけって……ごめん、ちょっと行ってくる!」
「うん、大丈夫!」
足音が遠ざかる。
倉庫には茉桜だけが残った。
俺は棚から養生テープを取り、そのまま戻ろうとする。
その時だった。
視界の端で、茉桜が大きな看板を持ち上げた。
身長と同じくらいある看板。
両手で抱えているせいで、前もほとんど見えていない。
「……何してんだ」
思わず口から漏れた。
嫌な予感しかしなかった。