気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
人の流れに乗りながら、私はキャンパスの中を歩く。
どこを見ても賑やかで、歩いているだけで楽しい。
「あっ」
見覚えのある後ろ姿が目に入った。
腕章を付けた柊弥さんだ。
本部テントの前で、実行委員らしき学生と何か話している。
「机あと2台足りない?」
「じゃあ体育館裏の倉庫から持ってきてもらって」
「了解です!」
指示を出しながらも、困っている人がいればすぐに駆け寄っていく。
家で見せる穏やかな笑顔とは少し違う。
頼もしい先輩の顔だった。
「さすがだなぁ」
思わず小さく呟く。
そのまま芸術棟へ向かう。
希遥さんの作品展示は、この建物の2階だったはず。
展示室へ入ると、思わず息をのんだ。
「きれい……」
照明に照らされた作品が並び、その前にはたくさんの人が集まっている。
「この色使い好き」
「写真撮っていいですか?」
そんな声があちこちから聞こえてきた。
少し離れたところでは、希遥さんが後輩たちと話している。
「先輩、この素材ってどうやって……」
「そこね、結構苦戦したんだよ」
家で見る希遥さんとはまた違う。
作品について話している姿は、本当に楽しそうだった。
「みんな、かっこいいなぁ」
自然とそんな言葉がこぼれる。
私も負けていられない。
そう思いながら展示室を出る。
すると、廊下の案内板が目に入った。
【 建築学科企画 巨大ダンボール迷路 → 7階 】
「そうだ」
まだ建築見てなかった。
私は矢印の方向へ歩き始めた。