気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
7階の講義室の中は思っていたより薄暗かった。
段ボールで作られた壁は私の身長よりずっと高くて、先が全然見えない。
「すごい……」
思わず声が漏れる。
「建築ってこんなの作れるんだね」
隣の奈瑠もきょろきょろ辺りを見回していた。
入口では逸晟くんが笑いながら手を振る。
「途中でリタイアもできますからねー!」
「そんなに難しいの?」
「今年は結構本気!」
「想が設計したからね」
その一言に、私は思わず笑ってしまう。
「なんか納得」
「え、それどういう意味!?」
「想くんっぽいってこと」
「それ褒めてる?」
「たぶん」
逸晟くんが苦笑いする。
「じゃあ、いってらっしゃい!」
私たちは迷路の中へ足を踏み入れた。
「ねぇ、右と左どっち?」
「んー……右?」
「じゃあ右!」
最初のうちは奈瑠と話しながら歩いていた。
でも。
「ちょっと待って」
大きな分かれ道で立ち止まる。
右。
左。
まっすぐ。
どこも同じ景色に見える。
「別々に行ってみる?」
奈瑠が提案した。
「どっちかが当たりだったら呼べばいいし!」
「それもそうだね」
「じゃあ私はこっち!」
奈瑠は迷いなく角を曲がっていく。
「私もこっち行ってみる!」
手を振って別れる。
……それが失敗だった。
「えっと……」
曲がって。
また曲がって。
もう一度曲がる。
「あれ?」
さっき見たような分かれ道。
「気のせい……?」
もう一度進む。
でも。
「あれぇ……」
なんとなく。
嫌な予感がした。