気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
探しもの[So side]
「はぁー!難しかった!」
茉桜の友達、奈瑠だけが出口から出てきた。
笑いながら出てきた奈瑠に、出口で案内をしていた逸晟が拍手する。
「おめでとうございまーす!」
「いや、これ難しすぎ!」
「今年は結構自信作なんで!」
「5分以内に突破した人にははい、お菓子セット!」
「やったー!」
そう言って笑う逸晟の横で、俺は次の客を案内していた。
「ありがとうございました」
客を送り出してから、何気なく出口へ目を向ける。
……あれ。
「茉桜は?」
奈瑠が首を傾げた。
「え?」
「一緒に入っただろ」
「あ」
奈瑠はきょろきょろ辺りを見回す。
「……まだ出てきてない」
「別行動したんです、途中で」
俺は腕時計を見る。
迷路の中に入って10分。
奈瑠が出てきて、もう5分。
普通なら、とっくに出てきてもおかしくない。
「まあ、茉桜だし」
奈瑠が苦笑する。
「方向音痴だからなぁ」
「いや、それ以前にあいつ」
思わずため息が漏れた。
「迷子になる才能あるし」
逸晟が吹き出す。
「それ才能って言う?」
「言わねえ」
笑いながら返す。
……笑ってはいる。
でも、少しだけ引っかかった。
この迷路は、ただ難しいだけじゃない。
行き止まりを何度も作り直して、分岐も増やした。
照明も落としてある。
方向感覚が鈍い人なら、思ったより時間がかかる。
もう一度時計を見る。
さっきより、少しだけ長く感じた。
「想」
逸晟が俺を見る。
「行く?」
俺は小さく息をついた。
「……ちょっと見てくる」
そう言って、迷路の入口へ足を向けた。