気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
もう戻れない
奈瑠と別れ、私は湊都の後ろを歩いていた。
学園祭の賑やかな声が、少しずつ遠ざかっていく。
焼きそばの匂い。
ステージから聞こえる音楽。
笑い声。
ほんの数分前まで、その全部が楽しかった。
なのに今は、何も耳に入ってこない。
湊都は前だけを見て歩いている。
私も何も話さない。
沈黙だけが続く。
歩幅だけは、昔と変わらなかった。
そのことが少し嫌だった。
人気の少ないベンチの前で、湊都が立ち止まる。
「ここなら話せるか」
そう言って振り返る。
私はベンチには座らず、その場に立ったまま少し距離を空けた。
「久しぶり」
「……うん」
「元気そうじゃん」
「普通かな」
「そっか」
沈黙が流れる。
私は早くこの場を終わらせたかった。
「……それで、話って?」
私がそう聞くと、湊都は少しだけ笑った。
「あのさ」
「……何?」
「俺ら、戻れない?」
「……え?」
「もう1回付き合おうよ」