気付けば、隣にいた - 無愛想な同居人は、不器用に優しい。 -
「同じ家のやつ?」
湊都が想を見る。
「……へぇ。シェアハウスって言ってたよな」
「それが何」
「男と女で一緒に住んでんだろ?」
「……」
「楽しそうじゃん」
その言い方に、思わず眉をひそめる。
「湊都」
「何?」
「そういう言い方やめて」
「え、違うの?」
湊都は肩をすくめる。
「大学生の男女が同じ家に住んでて、何もないなんて逆に不自然じゃん」
「……」
「お前ら、どうせそういうことしてるんだろ」
空気が、一瞬で冷えた。
私は息をのむ。
「違っ——」
言いかけた、その時だった。
「それ」
想が静かに口を開く。
「お前に関係ある?」
低い声だった。
怒鳴っているわけじゃない。
なのに、その場の空気が張りつめる。
湊都は鼻で笑った。
「関係なくはないだろ。茉桜は俺の元カノなんだけど」
「だから?」
想くんは一歩だけ前へ出る。
「別れてんだろ」
「……」
「だったら、今どこで誰と暮らしてようが、お前には関係ねえよ」
湊都の表情が変わる。
「なんだよ」
「ずいぶん庇うじゃん」
「庇ってねえ」
「じゃあ何?」
少しだけ間が空く。
想はまっすぐ湊都を見た。
「見てて腹立っただけ」
湊都が鼻で笑う。
「は?」
「自分で手放したくせに、都合悪くなったら戻ってくる」
一歩。
想が湊都との距離を詰める。
「それで断られたら、今度は一緒に住んでるだけで勝手な決めつけか」
想の声は終始落ち着いている。
だからこそ、余計に怖かった。
「最低だな」